原則は建築物が建てられない市街化調整区域。その多くは田園地域になっていますが街中の周辺でも指定されている地域が多くあります。松本市では、そんな調整区域内でも平成22年に条例で指定された区域内では一戸建ての住宅や小規模な店舗等の建築が可能となりました。

逆に考えると、区域に指定されなかった調整区域での建築制限はさらに厳格化されたことになります。区域から外れた地域では従来の法律に則り、公共性の高いものや農林漁業に必要な建築物など限られた建築物しか建てられません。
限定的に自己の居住用や事業用の建物であれば安全性や防災面等を審査して建築が許可される場合はありますが、営業用の建築物の許可は下りないでしょう。今回売却を依頼された倉庫は区域外に建てられた営業用倉庫でしたが、ひと昔前は許可が下りたのでしょう。
経年劣化による傷みも多く、大規模な修繕もしくは建替えが必要な状態です。修繕して利用する場合は当時の許可に則った利用は可能ですが、建替えとなると新たに許可を得る必要がありますが、おそらく同様に営業用倉庫として許可を取得するのも難しいと思われます。
自己利用の倉庫であれば許可が下りる可能性はありますが、事務所等への用途変更での許可は難しく、個別事案として時間をかけて開発の審査にかけるのも無駄足あるいは門前払いとなる可能性が高いと思われます。
検討いただいた会社さんは主に事務所用途として利用したいとのことでしたので、今回はお見送りとなりました。敷地いっぱいに建っている倉庫を大規模修繕して、限られた駐車スペースでも利用できるという方でないとなかなかご縁がなさそうです。
さらに過去に土地を分筆した結果、現状は建築面積が建ぺい率オーバーとなっている、いわゆる既存不適格建物となっていますので、将来的に行政から指導勧告があることも予測されます。その際に特例で建替許可が下りる可能性はありますがハードルは高いでしょう。
市街化調整区域では、例えば事務所から店舗のように用途変更しての建替え許可が原則下りないため、その結果空き家の状態で放置されている建物が散見されます。同じ用途で許可を取って全く異なる形で利用しているというのも聞きますが完全にアウトです。
令和4年より全国的に幹線道路沿いなど一部の地域で異なる用途での建て替え許可が下りるように弾力化されています。観光地である松本市でも今後必要に応じて法改正されていくことでしょう。