田畑などの農地を売買することに対しては、農地を守るという観点から各行政機関はその対応に非常に慎重です。農業の経験がない人が明日から始めるので農地を買いたいといっても一般の宅地売買とは異なり所有するまでのハードルは高くなっています。

長野県内の農地の写真

農地を取得するためには、行政機関である農業委員会の許可が必要となります。許可を受けるためには、農作業に常時従事することや敷地全部を効率利用すること、周辺地域と調和することなど細かく条件が定められていて、法人であれば農地所有の適格法人であることが必要です。

また許可後の権利取得者の耕作面積の下限が定められていましたが、これについては農地法が一部改正されて、令和5年4月1日から下限面積要件が廃止されることとなり、以降は面積の大小にかかわらず、農地の権利取得が可能となりました。

既に農業に携わっている方が農地を取得する場合にも当然に農地法3条の許可が必要となります。ほぼ要件は満たしていますので、農業未経験者に比べて明らかに許可を受けるハードルは低いですが、それでも農業委員会による審査を経て許可を受けなければなりません。

実際に委員会に出向いて、農地を取得して現実的に耕作を続けることができる体制なのか、家族構成や農業従事者数などから判断して無理がないのかといった内容を審査されるようです。耕作物の内容や鶏などの動物の飼育はないのかなど、こと細かく申請することになります。

また農地を取得するということなので、農業委員会の担当者が実際に取得しようとしている現場に出向いて、耕作ができる田んぼや畑の状態になっているかを確認します。仮に駐車場などになっていた場合は田や畑の状態にするよう指摘されることになります。

見た目はほぼ畑の状態であっても、一部に樹木が生えていたりしても伐根して畑の状態に戻すことを求められたことも実際にありました。ちょっと厳し過ぎるような気もいたしましたが、その時は売主側で撤去復旧することで対応することにしました。

松本市や周辺地域では、就農も後押しして農業を守る制度が充実していますが、農地を取得するハードルは依然と高いままです。面積要件が廃止されて新規就農者のハードルが下がったとは言え、しっかりと農業者としての自覚を持って農地を取得する必要はありそうですね。