ご実家の売却のために築後60年程度経過した建物を取り壊したいというご相談がありました。解体業者さんのご紹介をさせていただき、約3週間かけて母屋と倉庫の解体工事が完了いたしました。売却に向けて現地で打合せをしていたところ、隣地者の物置の一部がこちら側にはみ出ていることが分かりました。

普段居住している間は、完全に敷地に侵入しているなどよほどの事態でもない限り、隣地者の構造物のはみ出しには気づかないものです。いざ更地になってよく見ると、最初からなのか時間をかけて傾いたのかは不明ですが屋根や庇の一部が越境していたなんてことはよくある話です。
当人同士が越境状態を理解した上で利用していればそのままでも構いませんが、売却して所有者が第三者になるケースや相続して関係者が変わってしまうタイミングでは越境状態について何らかの対処をしておかないと諍いに発展する可能性があります。
長年そのままだった状態をいきなり解消するのは難しいとは思いますが、放置しておくと侵入している部分の土地が時効により隣地者の所有になることもあります。これはレアケースではございますが、いづれにしても現状を互いに理解した上で何らかの対処は必要でしょう。
容易に移動できる物であればすぐに解消することができますが、そうでなければ現状を認識したうえで、将来に越境物を撤去するか、建替えや売却のタイミング等で越境状態を解消することを約束する覚書を交わしておくという方法もあります。覚書があれば時効による取得も回避することができます。
お隣同士の関係が良好であればスムーズに覚書等を交わすことができると思いますが、険悪な関係だったりこれといった親交がなければ、不動産会社等の第三者に依頼すればよいかと思います。どうしても応じてもらえなければ、弁護士や司法書士に入ってもらって法的に解決することになるでしょう。
法的に解決するのは費用と時間がかかります。それが億劫であれば越境している部分の敷地を分筆して売却あるいは贈与するという方法もありますが、こちらも分筆するための測量費用などは発生します。贈与するのであれば費用の実費くらいは相手側に負担いただきたいものです。
住宅供給全盛期の古い団地ではよくある話です。相続した古い不動産を売却する際には不動産会社や土地家屋調査士等の専門家に入ってもらって、将来に問題を先延ばししないよう解決するようにしましょう。面倒であれば不動産会社に買い取ってもらうという方法も検討しましょう。