眺望権という権利が存在します。建物の所有者などが、そこからの景色を他の建物などに妨害されることなく、これまで享受してきた景色を眺望できる権利です。
眺望はプライスレスですが、侵害されたら損害賠償金や慰謝料はもらえるのでしょうか。
🏔損害賠償の請求が認められたケースもある
山並みの景色が重要な目的として、社員用の保養施設を建てた会社が、その後100mほど離れた場所にリゾートマンションが建設されたことによって眺望を阻害されたとして損害賠償請求を求めた裁判では、施設所有会社(原告)の訴えが認められました。
保養施設にとっては、山並みの眺望が特別な利益享受となっていることと、リゾートマンション建設側からは、事前の説明もなしに受忍限度を超えるマンションを建設して、眺望を著しく阻害したことが判決の決め手となりました。
また、花火大会が目前に見えるマンションを購入した原告が、同じ業者がすぐ近くに別のマンションを建設したことにより、花火が見えなくなったという裁判では、請求額を減額しながらも訴えが認められました。それだけ花火大会が見えることが、マンション購入の重要な決め手になったということです。
マンションについては、販売会社の説明義務違反で契約解除になったようなケースも時々聞きます。
☀日照権よりは認められない眺望権
日照権は、日当たりを確保して健康的な生活を送る権利のことで、保護されるべき権利としてある程度確立したものであると言えます。
それに比べて眺望権は、保護の必要性は低いと考えられています。
日照権が侵害されると、心身の健康にも直接影響を与える可能性が高いと考えられているのに対して、眺望権が侵害されても、心理的な満足感を阻害するに過ぎず、日常生活に与える影響は少ないと考えられているためです。
目前に高い建物が建設されても、日照が阻害されるような場合には損害賠償を請求できる可能性はありますが、眺望権を侵害されたというだけでは、なかなか損害賠償にまではいかないものです。
ただ、販売会社から虚偽の説明を受けて、あるいは説明不足のまま購入したということになれば話は別です。実際に、売主や販売会社の責任が認められて、損害賠償に至ったケースは多数存在します。
眺望最優先で不動産を購入する際には、売主側の説明をしっかり受けるようにしましょう。
ただ、売主すら予測できない建物が建つ場合もありますので、近隣に広い空き地がないかくらいはチェックしたいですね。