一戸建て分譲業者に入社された独身の方が、入社3年目に自社の新築建売住宅の購入を勧められたというお話を聞いたことがあります。勧められたというよりは、実際に住めばお客様への説明の説得力も上がり成績に貢献するという理由から、当然のようにローンを組まされたそうです。

新築住宅のイラスト

社員が投資物件として積極的に購入したり、2連棟で建築してどちらか一方に居住してもう一方は賃貸に出してローンと相殺する手法を推奨しているというお話は聞きますが、いきなりマイホームとして若い社員が本位でないローンを組まされるというのは相当なパワハラですね。

福利厚生の一環で物件購入のローン補助があって、購入すれば以降の待遇にも良い影響があるなど言われたそうですが、どう考えても必要のない不動産の購入に納得ができず、上司に売買契約を取り消したいと相談したそうですが、手遅れということで取り合ってくれなかったとのこと。

その後、弁護士に相談したところ、不安をあおる行為にあたるので消費者契約法違反により取り消しできる可能性が高いということを知り、その旨を上申したところ表沙汰になることを恐れた会社側から売買代金の返還と違約金が支払われたそうです。

消費者と事業者の間には取引のための情報の質と量に格差があって、消費者契約法はこの格差に着目して消費者を保護するための法律です。取り消しできる事由にはいくつかありますが、不安をあおる告知も取り消し事由になっています。

不利益な事実を告げなかったり、経験不足を逆手に不当な要求をしたり、恋愛感情に乗じた人間関係の乱用、霊感等による知見を用いた告知も契約の取消し事由になります。今年の7月に施行された不同意性交罪にも通じる部分があります。

思い起こせば、自身も損害保険会社入社2年目の頃に、取引先の決められたディーラーから新車の購入をしました。いきなり言われてディーラーに連れて行かれたのを思い出します。いづれは購入すると言っても、メーカーも決められていきなりとは今思えばパワハラですね。予め駐車場を確保されていたなんて先輩もいました。

本意でなくても結果的に誤認させてしまう恐れもありますので、不動産会社としても適正な業務を担保するために取消事由については把握しておきたいものですね。