不動産を売却した際に発生する費用で最も高額となる可能性が高いのは不動産譲渡税という税金です。ただし、譲渡益に課税されるので、購入した時より安く売却となった場合は購入した当初の価格を証明できる書類があれば譲渡税はかかりません。また自宅などの生活資産であれば譲渡利益の特別控除があります。

不動産売却による譲渡税は、相続して空き家となった実家等を売却する際には注意が必要です。近年の法改正により、一定の要件を満たした空き家を売却した際にも、マイホーム同様譲渡益より3,000万円が特別に控除されます。ただし相続人が3人以上いる場合は一人2,000万円までの控除となります。
一定の要件とは、相続開始直前に被相続人が居住していた家屋で他に居住していた人がいない、さらに譲渡までに事業用、貸付用、居住用に供されていない昭和56年5月31日以前に建築されたものであることなどが条件で、分譲マンション等の区分所有建物は除外されます。
さらに要件があって、相続日から3年が経過する日の属する年の12月31日までに譲渡、譲渡時までに又は譲渡した日の属する年の翌年の2月15日までに建物を一定の耐震基準に適合させるか取壊しをすること。ただし現在は法令改正によりは譲渡した後に譲受人が適合あるいは取壊しを行ってもよいことになっています。
いづれにしても、例えば令和7年7月に譲渡した場合は、令和8年2月15日の確定申告開始日までに、譲渡人または譲受人により耐震リフォームを施すか取壊しを行わないと、譲渡益が発生した場合の特別控除が受けられないということいなり多額の譲渡税が課税されることになります。
昭和56年5月31日以前に建築された建物だと取得した際の価格が分かる資料等があることは少なく、不明の場合には売却価格の5%が概算取得費として控除されるのみとなります。また相続後3年10ヵ月以内に売却した場合には売却財産にかかわる相続税が取得費として認められます。
相続した空き家についていえば、取得費を積み重ねても多くのケースでは譲渡税が発生します。親族間で話し合ってしばらくは共同利用する形で残そうということでもなければ、売却して譲渡税の特別控除を利用して節税することを検討した方が良いでしょう。
時々親族の間で譲渡するというお話にもなりますが、親子や同居親族間での譲渡だとこの特例は利用できません。また別居の兄弟等に譲渡する場合は特例は利用可能ですが、諸要件に変わりはございませんので、後利用する場合には耐震リフォームを施さないと特別控除は受けられません。
親族間で譲渡を検討する場合には、特別控除の特例と併せて譲渡価格にも注意が必要です。実勢価格とあまりにもかけ離れた安価だと、後で贈与税の課税が発生する可能性があります。これといった明確な判断基準はないですが、固定資産税等の評価額を基準に税理士等の専門家と相談するようにしましょう。