賃料収入のある、いわゆる収益物件を購入する際には、毎月入ってくる賃料収入の額が最も重要な判断材料となることは言うまでもありません。
仲介業者はレントロールという賃貸借の状況を一覧にした資料を作成して買主側に提出しますが、売却後に実際の賃料が異なっていたなんて事態になったら目も当てられませんが、実際には起こり得ることなのです。
📖売主が非協力的で実態がつかめない
買主側も購入を急いでいる上に、売主側が資料の提供に協力してくれないという状況は、仲介会社にとってはかなり不安な状況です。それでも自社で可能な限り調査をして、売主側から確認ができた範囲で賃貸物件の状況を作成するというケースは十分に考えられます。多少の差異がでる可能性があることを説明して、売買契約に踏み切るということになるのでしょう。
実際に見聞きしたお話ですが、物件引渡し後に仲介会社が説明した賃料収入と実際の賃料収入に、毎月10万円以上の差額が判明して訴訟になったということがありました。仲介会社としては可能な限り調査をした結果だという言い分になりますが、これは苦しい言い訳であり、最終的には引渡し日から訴訟決着までの間の差額賃料相当分の損害賠償という結果となりました。
📖そもそも物件を預かるべきではなかった
判決の中で裁判官からは、確かに仲介業者は、売主に対し賃貸借契約書等の資料の提出を求めるなどしていて、売主がこれに十分に対応しなかったという事情があることは否めないものの、そもそもの発端は、仲介業者において売主から十分な資料が提出されていないにもかかわらず、いわば見切り発車的に専属専任媒介契約を締結してしまったことにあると言わざるを得ないとしています。
また、そういった状況からも、収益物件に係る賃貸借契約の状況について、客観的な裏付け資料を確認することができていないのであれば、買主に対し、少なくともその旨を明確に説明すべきであったとも指摘があったようですが、説明していたら果たして売買は成就したのでしょうか。
損害賠償とは多少気の毒とは思いますが、仲介会社の責務の大きさを感じたものでした。