親などから不動産を相続した場合には、相続税が課税されます。さらにその不動産を売却した場合には、利益が出た分に譲渡税が課税されますので、実質的には二重に課税されていることになります。

ある意味、贅沢税なので仕方ないという見方もありますが、不動産を次世代に流通させるという意味では弊害になっていることは確かです。

家を遺産相続するイラスト
🏘不動産がスムース流通するようになる

相続税が廃止されることはとても考えられませんが、少しでも負担が軽くなればそれだけ不動産の売却に踏み切りやすくなるのではと思います。

相続した不動産を売却しても、利益が出なければ当然、譲渡税はかかりません。例えば親が3000万円で購入した不動産を1000万円で譲渡したとなると2000万円の損失となりますので、譲渡税はかかりません。

ただし、3000万円で購入したという証拠が必要になりますが、契約書等を保管されている人は少ないと思います。証拠がない場合には、譲渡した金額の5%は概算の取得費として認められますが、利益を圧縮するにはあまり効果は大きくないと思います。

そんな状況を鑑みて、平成27年以降に相続した不動産については、3年以内に譲渡などの一定の要件を満たせば、支払った相続税の一部または全部が取得費として加算される特例ができました。もちろん相続した不動産にかかわる相続税のみが対象ですが、一定の節税効果は期待できると思います。

🏘相続税と贈与税の一本化は見送られた

今年の改正でもしかしたらと言われていた、相続税と贈与税の一本化はあまり議論されることもなく見送りとなりました。

税率の一番高い贈与税の税率が見直されれば、それだけ後継世代への不動産の流通が活発になると期待されていますが、急ハンドルを切るのはなかなか難しいのでしょう。結果見送りとなり、今後も少しづつ改正されていくような雰囲気です。

贈与税は相続税の補完的な役割を担っていて、相続する前に資産を贈与して相続税を逃れるのを防ぐという意味で補完的な制度となっています。

基礎控除が110万円ですので、年間110万円までの贈与であれば、申告も不要で課税されません。20年かけて贈与すれば2200万円を非課税で贈与することができます。贈与契約書などを作成して意思表示を立証できるようにはしておきたいですね。

贅沢税とは言え、後の世代に資産がスムースに流通するような制度をもっと充実させないと、経済は活性化しないでしょう。ゆくゆくは贅沢税の一本化で不動産市場も活性化することに期待したいと思います。