売主や仲介会社においては、過去に敷地内や建物内で事件や事故があったかどうかの説明については、認識していれば説明する義務があります。何年も前のことまで説明義務があるのかは、その事象の程度や買主側の購入判断にどの程度影響を及ぼすかにより判断されます。

宅建士講習テキストより判例
宅建士講習テキスト

マイホーム購入する買主に対して、20数年前に発生した自殺についての説明がなかったということで仲介会社に損害賠償の支払いが命じられた判例もあります。事件に絡む自殺ということで、近隣住民の記憶にも残っているという状況下であったことが判決に影響したものです。

人の死については宅建業者がどの程度まで調査義務を負うかについては、その判断が難しい場合もあるので、令和3年10月に国土交通省は、宅建業者による人の死の告知に関するガイドラインを公表しています。

病死、自然死、転倒やお風呂での溺水死など、日常生活で起こり得ることが予測されるような不慮の事故による死亡は、基本的には説明しなくて良いとされています。ただし不慮の事故等であっても遺体放置期間が長期に及び、リフォームや特殊清掃が行われた場合や事件性が疑われるような場合は告知が必要とされています。

また火災による死亡、自殺や他殺による死亡の場合であって、その事象の内容にもよりますが、通常は6~7年以内に発生した事象については告知が必要で、隣接地における死亡や共同住宅における日常生活で使用しない共用部分における死亡や、隣室による死亡ついては告知を要しないとされています。

あくまでもガイドラインとなっていますので、最終的には個別の事象に応じて判断することになりますが、プライバシーの問題もあり、また近所の方々も告げ口になるようなことはしたくないでしょうから、どこまで調査すればよいのかは難しいところです。

以前に建物着工の直前に自殺の事実が判明して契約解除となったことがありましたが、その時はたまたま近所に取引先の方がいたので内々で知ることができました。ご近所が知らないようなことまで探る必要はないのかなというのが率直なところでした。

誰もが知っているような事件事故は疑う余地はございませんが、購入の判断に影響を与えるような事象については、少しでも疑わしいところがあれば、出来る限り調査のうえ安全な取引を心掛けたいものですね。