自動車メーカーさんの事務所兼整備場として利用する建物の賃貸借契約の仲介業務のお手伝いをさせていただきました。取引先からのご依頼があり、現地調査から契約書関係書類の作成及び重要事項説明からお引渡しまでの一連の業務を行いました。
賃貸借契約に関する重要事項の内容については、建物の状況やライフラインについての説明は売買契約と同様に必須ですが、都市計画法や建築基準法、私道に関する負担等に関する事項の説明などの説明はなく、売買契約に比べて項目は少なくなっています。
賃貸借契約において最も重要な事項は、月々の賃料はもちろん賃料以外に発生する共益費や駐車場代、契約時に必要な敷金や礼金、その後の契約更新料といった費用に関する事項です。売買契約に比べて項目も多く、貸主側としっかり取り決めをしておかないと後でトラブルの元になります。
特に敷金や保証金の退去時の清算方法、契約更新時の更新料については後になって揉めることが予測されます。退去時の原状回復義務については2020年4月の民法改正でガイドラインが整備されて敷金の清算については揉め事が少なくなったと聞きます。
更新料については契約時の説明不足や契約内容のあいまいさなどが原因で、更新時に貸主と借主の認識が異なり纏まらないということが想定されますので、そもそも更新料が必要なのかという議論にもなりますが、契約時にしっかりと明文化しておくことが重要だと思います。
今回の事業用建物については、保証金(敷金)は納めますが、共益費や駐車場代は込みとなっており、更新料の定めもございませんが、事業用特有の建設協力金という金銭を貸主に納める内容となっています。
建設協力金というのは、貸主が入居者から費用を借りて建物や設備を新設して、借りた費用を月々の賃料で相殺していくという仕組みで、貸主の初期投資負担を少なくする土地活用方法のひとつです。今回は設備の新設ということでこの手法を活用しての契約となりました。
また契約時の費用の中に、契約書に貼付する印紙がありますが、建物の賃貸借は通常印紙税は発生いたしません。ただし今回のように協力金という名目で金銭の収受が発生する場合は、消費貸借に関する契約書に該当するため印紙税が発生します。
事業用建物の賃貸借については、その金額も大きくなり居住用にはない費用が発生したりする場合があります。印紙税の取り扱いついては脱税行為にもなりかねませんので、慎重に判断しなければいけないとあらためて感じた次第でした。