不動産という高価な品物を、ただでもいいから買ってほしいというご相談がありました。以前に勤めていた会社では、新築建売住宅の建設用地の買取り仕入れを主な業務としていましたが、そんな中で起こった珍しい出来事でした。

廃屋のイラスト

当時はある程度まとまった広さの土地を分割して、複数棟の新築建売住宅を建築して販売しておりましたが、場合によっては1区画30~35坪程度の狭小地となることもあったり、三角形の土地に建物の配置を工夫して建築することによりコスパ重視で販売していたりもしました。

そんな中、3区画分の土地を仕入れた際に近隣挨拶回りをしていたところ、隣地の古びた倉庫が建っている土地の所有者にもご挨拶に参りました。すると開口一番に、建物はそのままの状態ということであればただでも良いから引き取って欲しいというのです。

本人としては親から数年前に相続したものの、その後の使い道もなく放置していましたが、雑草の管理も心労で、建物の老朽化も進みいづれ屋根外壁が崩れる恐れもあるので、お金ではなく何とかしたいと考えていたところこの機会に処分したいとのことでした。

既に土地の広さ40~45坪の3区画の分譲住宅で計画していましたので、ただでも良いと言うものの35坪程度の整形地でしたので、単独で建築する計画といたしました。35坪とは言え土地の形が良かったこともあり、駐車スペースも2台分並列で確保することができました。

当然に他の区画より土地が狭いうえに、土地代がただで解体費用など鑑みてもかなり安価での仕入れとなりますので、他区画にも按分する形で予算配分をさせていただき、全体的に価格設定を抑えることができた結果、早期に売却することができました。

隣地とのご縁に感謝しつつ、実際のところは多少の土地代金をもって先代様にお供えする形で持参いたしました。ただより高いとは言いませんが、分譲住宅の購入者にとっては長いご近所付き合いもあることですのでそこは気持ちの問題かなと思います。

土地の仕入れには色々なトラブルもありましたが、大半は初動の対応次第でお話合いにより解決することができていました。トラブルもあり良縁もありでとても良い経験値となり、現在の業務にも活かすことができていれば幸いです。