昭和51年に新築した和風の2階建住宅に、最後はお母さまお一人で過ごされていましたが、昨年にご逝去されて空き家の状態になっている実家の後始末についてのご相談をいただきました。財産分割協議を経て3人兄弟の長男様がご実家を相続されることになりました。

ご売却が前提でのご相談で、3人共有で相続されていれば全員の同意が必要ですが、単独所有のため独断で決めることができます。とは言えご兄弟それぞれの思い出の詰まった実家を売却するとなれば、何の相談もなしに断行すれば遺恨が残ることもあります。

ご親族が集まる場所としてしばらく残そうというお話もあったそうですが、電気水道ガス代や固定資産税、火災保険等の維持費用やメンテナンスについてうやむやになりそうなこともあり、売却する方向でお話が大方まとまったということでした。

しばらく残すのは良いのですが、一定期間を過ぎると売却時には不動産譲渡税が売却価格にまともに課税されることになります。今のところ令和9年12月31日までに売却した場合は、空き家の譲渡所得の特例を利用して譲渡益から3,000万円が特別に控除されます。

特例の主な条件は被相続人が居住していた昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションは対象外)で相続開始直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったことなどがあります。後は耐震性を有する建物に改修するか取り壊して更地にすることが条件です。

昭和56年5月31日以前の建物は旧耐震基準ですので、耐震リフォームが必要になる場合がほとんどなので、現実問題として特例を受けるには取壊しということになるでしょう。今回ご相談の建物は諸条件を満たしていますので一定期間内に建物を取り壊せば特例が受けられることになります。

空き家の状態で残しておくと、固定資産税については建物がある限りは住宅の敷地としての軽減措置を受けられますが、老朽化が進んで行政から特定空き家または管理不全空き家の指定を受けてしまえば更地と同等の固定資産税が課税され、4~5倍に跳ね上がります。

今回の相続不動産は市街地の住宅地に位置するほぼ整形地の土地ですので、建物を有効活用する見込みがないのであれば、取り壊して売却することが望ましいと思います。せめて建具や装飾品を思い出に取っておくのもよいでしょう。

間もなく1周忌を迎えれらますので、それまでにご売却のシミュレーションをご提案しながら業者紹介や販売活動のお手伝いができましたらと思います。今時の住宅ではなかなか見られない和室の欄間がおしゃれでしたので思い出に残しておこうというお話をされていました。